⑱目標設定の方法

システム1のルートであれシステム2のルートであれ、人間は必ず認知バイアスが関与して行動しています。そこに何も意図的な目標が入っていないと、自分の行動が何の指針もなく、行き当たりばったりで起きてしまったり、自分が認識していない認知バイアスに引っ張られて、意図しない行動をしてしまうということがあるのだと思います。

 

もちろん、明確な目標を意識していないとしても、自然と何らかの目標に近いものや価値観は誰しも認知バイアスに入っていると思います。

 

子供の頃に将来は野球選手になりたいと思っていれば、自然とすべての行動はそれに向けられて、学校が終わったら何も言われなくても野球の練習をしていたり、夜見るテレビ番組は野球中継だったり、好きな野球選手の写真を集めたりしています。

 

本気でいい学校に入りたいと思っている子供であれば、親に言われなくても自分から進んで塾に通ったりして自分から進んで勉強します。本気で入りたいという認知バイアスが入っていない子供は、親からガミガミ言われない限り自分から勉強しません。もちろん、自分から進んで塾に行く子供も、最初は親からガミガミ言われて認知バイアスに入ったのかもしれません、でも一度入り込めば自分から進んで行くようになります。

 

タイガーウッズも、イチローも、最初は親がゴルフや野球をやらせたくて、親から認知バイアスに刷り込まれたはずです。その後は、しっかり認知バイアスに刷り込まれている目標を、自分の意思で意識するようになったのだと思います。彼らが今になって、親から刷り込まれた認知バイアスをどう思っているかわかりません。ゴルフや野球以外の人生を歩んだらどうなっていたかということを、空想してみることはあるのかもしれません。

 

多くの人は大人になって、元々入っていた認知バイアス(子供の頃の夢や目標)を忘れて何をしてよいのかわからなくなったりします。また、「勉強していい会社に入って結婚すれば幸せになれる」と社会に刷り込まれた認知バイアスが、実は自分に当てはまらないことに気がついて、混乱している状態なのだと思います。

 

大人になってから目標を設定してみるというのは、この時点で改めて自分の指針となる認知バイアスを、設定し直してみるということです。何度も言うように、人間は自分が気がつかないうちに、様々な認知バイアスが入っており、毎日それに影響されて生きているので、どうせ大きく影響されるものなら、自分で納得して認識できる認知バイアスに影響されましょうということです。

 

では目標を考えて、それを認知バイアスを入れると言っても、それが本当にしっかり入るのかという問題があります。子供の頃に親から「勉強しないと偉くなれない」という認知バイアスを入れられても、それを素直に受け入れられないと、やはり自然と勉強するようになりません。認知バイアスは入って欲しくない時に入ってしまったり、入って欲しくても簡単に入らなかったりする厄介な性格もあるのです。

 

そこで自己啓発やコーチングでは、認知バイアスを入れるための様々なテクニックが競われているわけです。目標を何度も文章に書くとか、なるべく具体的に視覚化するというのは、五感のすべてを使って刷り込む効果を狙っています。

 

また具体的な目標だけでなく、その基となる価値観やミッションをはっきりさせようというのは、本気でそうなりたいという感情を伴った方が認知バイアスが入りやすいからという理由によります。過去の成功体験を思い浮かべながら、その時の感情を目標に投影するようなテクニックも同様です。