⑯ポジティブ組織論―豊かさのカルチャー

・豊かさのカルチャー

 

肯定への偏りが強い組織とは、強み、能力を発揮し、可能性を追求し、ベストを尽くすことを第一します。逆に否定への偏りの強い組織は、脅威、問題、弱点、最悪の事態に着目して、それらに対処することをまず第一とします。

肯定への偏りが強いと言っても、もちろんネガティブな感情や事象を無視するということではありません。肯定的な組織の方が、実はネガティブな状況に対しても上手に対応できることができると言えます。

ネガティブ感情の話で出てきたように、人はネガティブな感情の時は、目前のネガティブな状況に対処すべくすべての意識を集中して、他のことは目に入らない状態になります。あえて一時的に視野を狭くして対処するわけで、人が生きるか死ぬかの緊急事態の時は、その方が生存に役立つわけです。

一方で、企業がネガティブな状況に直面している時というのは、視野を狭くして目の前の問題だけに集中して対処してしまうと、かえって事態を悪くしてしまうことが多いと言えます。

たとえば企業で何か不祥事が起きた場合に、否定的な組織は、とにかく目の前の脅威を消すことに全神経を集中してしまうことになり、短期的な視点から、事態のもみ消しに走ってしまうような状況になりかねません。そのようなやり方が、かえって社会や従業員の信頼を致命的に損ねて、企業の生存を危うくしてしまった事例は枚挙に暇がありません。

肯定的な組織は、そのような場合でも、幅広い視点を持ち、長期的にどのように対処すべきか様々な選択肢を検討した上で、ベストの対応ができる可能性が高くなります。

このように、豊かな組織のカルチャーを構成する要素として、ポジティブへの傾倒、徳性の高さ、肯定への偏りなどを見てきましたが、これらはポジティブな組織がもたらす結果ではなく、経営陣がポジティブな組織を作るために、これからでも変えていくができる要素であることを認識することが大事です。

たとえば人間というのは、信頼されて仕事を任されれば、気分が良くなると同時にやる気も増え、周りの人たちにも余裕を持って触れ合えるようになり、そこからまた信頼とチームワークが広がっていくという形で、ポジティブさが伝播していくことになります。

企業のカルチャーがこれらの要素で変わっていくことにより、従業員の中にポジティブな感情が増え、それぞれの強みを活かすことが増えて、チームワークも強化されていくことになります。

豊かさのカルチャーとは、このように様々なポジティブの要素がお互いに作用し合って広がることで、組織のパフォーマンスを上げることにつなげることであり、経営陣がこれらのポジティブな要素に確たるコミットを持つところから始めることで、組織を大きく変えていく可能性を秘めています。