⑬個人の認知バイアス

・記憶の認知バイアス

 

まずは「記憶の認知バイアス」の方ですが、こちらの方が文字通り、その人特有の認知バイアスであるという意味では、より重い悩みに発展しがちです。

 

たとえば、子供の頃から親に「お前はだめな子だ」と言われ続けたせいで、「私は成功するわけがない」という認知バイアスが入っているとします。大人になって仕事でチャンスを与えられ、たとえば重要なプレゼンを任せられても、その認知バイアスが影響して、やる気が出ないで十分に準備しなかったり、本番で緊張してミスしたりすることになります。

 

その結果、プレゼンは失敗してしまうことになります。その上、その失敗体験が記憶され、ますます「私は成功するわけがない」という認知バイアスが強化されます。これが繰り返されると、負のループに陥ることになります。これがうつ病になる典型的なパターンと言われています。

 

このような状況を解決していくには、まず自分がそのような負のループに陥ってしまった原因、すなわち認知バイアスを探るところから始まります。なぜなら、何度も書いているように、ほとんどの人は、自分の認知バイアスに気がついていないからです。上記の例でも、この方は自分の認知バイアスに気がついていないのです。

 

自分の認知バイアスに気がつくための一つの方法は、上記のように失敗したケース、あるいは成功したケースも含めてできるだけ多くの事象を集めて、その中にある共通したパターンを探ってみることです。

 

その時に、自分に関する認知バイアス(私は成功するわけがない)、人全般に関する認知バイアス(人は働かなければならない)、世間全般に関する認知バイアス(出る杭は打たれる)などに類型化してそれぞれ考えてみると、探りやすいと言われています。

 

認知バイアスに気がついたら、もうそれだけでも大きな進歩であり、その気づきだけで今後の行動を大きく変えていける可能性もあります。そして気づいた次は、それをもう少し修正できないか考えます。このケースで言えば、人間は成功することもあれば失敗することもあるわけで、常に失敗し続けると考えるのはあまりにも偏り過ぎているということに気づき、「私は失敗もすれば成功することもある」と修正していくということになります。

 

ここまでできれば、「私は成功するわけがない」と入っていた認知バイアスが修正できたことになります。当然、言うほど簡単なことではないわけですが、これがカウンセリングでいう認知行動療法です。

 

そこまで重たい例でなくても、人は誰でも思いグセとか心のクセとか言われるものがあります。何かうまくいかない事とか、改善したいことがあったら、まずその背後に何か自分の思い込み=認知バイアスがないかを考えてみるクセをつけると良いと思います。